ひと月遅れる日記

フーガはユーガ

伊坂幸太郎の最新作「フーガはユーガ」を読んだ。すごく面白かった。ここ何年かで一番面白かった、「ガソリン生活」以来かな。

黒よりもどす黒い「悪」という観念の存在がこの人の作品には通底していて、個別でみると凄惨な描写もあれば目を覆いたくなるような絶望的な状況も描かれるものの、作品全体で見るとそこに目を向けさせつつ希望を感じさせるのが本当にうまい。

もう一つ言うと、超能力とか死神とか喋る案山子とか最初っから突拍子もない設定にも関わらず、かつその設定が物語の主軸だったりするにも関わらず、その不自然さをSFとして読ませない強引さがすごい。
今作も冒頭からいきなり瞬間移動の能力が設定される(ネタバレでもなんでもない)も、まあまあそこはこういうもんだからと、そこを突っ込むなんて野暮ですよと、持っていけるのがすごい。

さりげなく他の作品のキャラクターが出てくるところもずるいと思うわ。見つけると喜んじゃう。